お知らせ
- 2022/12/31(土) 23:59:59
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更新された記事はこの下にあります。
楽史舎では本の通販なども行っております。
BOOTH(rakushisha.booth.pm/)や東方書店さん(www.toho-shoten.co.jp/)などご利用下さい。
問い合わせなどはホームページ(http://www.diced.jp/~rakushi/)をご覧ください。
参加予定イベント
・何かイベントがあれば
今後の新刊予定
・何にするか検討中です。
最近はtwitterにもいます。アカウント:@sangatsu_rakshi
よろしければ声を掛けてくださいませ。
絵を描けない人のための、シュッとしたイラスト作成法(DesignSpark Mechanical+illustrator)
- 2021/04/28(水) 19:47:19
「シュッとした」で伝わるんだろうか?
すっかりご無沙汰しております。
見れば前回の記事が2019年、つまりコロナ前。思えば遠くに来たもんだ。
さて、コロナの間にもゆっくりと本を作ってまして、先日ようやく『失敗しない青銅器の鋳造』をリリースすることができました。
<お求めはこちらBOOTHから>
テーマが青銅器の鋳造ということで、おそらくなじみがない人がほとんどでしょうし、いろいろ図解した方が良いだろうとかなり図を多めに入れてみました。
結果的にかなり分かりやすい作りにできたのではないかと思ってます。
ただ、作る際にはいろいろ苦労がありました。
私は絵を描ける人間ではないのでイラスト系のツールを使ってそれっぽく描いてもいまいち整わない。
ということで目を付けたのが3D-CADツールで形を作り、Illustratorで整えるという方法です。
絵を描けなくてもそれっぽい絵を仕上げられる方法ですので誰かの役に立てるんじゃないかと
今回は3D-CADツールとしてDesignSpark Mechanicalというのを使っています。
特長は
・無料で使える(しかも期間の制限も無し)
・商用利用可(描いた絵を同人誌で使う場合なんて規約はまず無いので、より安全なものを)
とあわせて
・直感的に使える
といったところです。
3Dプリンタへの出力にも対応しているので、作ったものを実際に形にできるのも将来的には嬉しいかもしれない。
直感的というのは、
平面のマス目に四角を描いて
矢印で引っ張ると、積み木のようになります。
そこに丸を描いて
矢印を押し込むと、穴が開きます。
とっても簡単!
器の場合は断面を描いて中心軸を決めれば、
くるっと回して完成です。
部品同士が重なった部分をくり抜くなんてこともできますので今回の例でいえば先に器の形を作ってしまってから
周りを鋳型の形で覆い、器の形でくり抜けば鋳型も簡単に作れてしまいます。
好きな場所で断面図を表示することもできるので、もしかしたら絵を描ける人にとっても便利かもしれません。
器の形ができたらIllustratorにデータを渡して仕上げます。
まずDesignSpark Mechanicalで見せたい角度に調整したら2D-CADのデータにエクスポートします。
※エクスポートオプション>2D AutoCAD(*.DXF)を選択
ここからはイラレでの作業です。
ありがたいことにIllustratorはCADデータをそのままベクターデータとして開いてくれます。
開いてみるとこんな感じ。
CADデータに含まれているすべての線が表示されているのでごちゃごちゃしてますが、「Hidden」のレイヤーを消してみると
器の形が見えた!
この時点ではすべての線の太さが同じになっているので、
輪郭線は太め、補助線は細めとメリハリをつけていきます。
たぶん正しいメリハリの付け方があるんでしょうが、私は補助線も削ってこんな感じで。
というわけで、絵心無しでもできるイラストの描き方でした。
何かのお役に立てそうであれば使ってみてください。
既刊の価格改定します
- 2019/09/07(土) 10:23:18
滅多に書かないブログとして安定の1年ぶり更新でこんなお知らせを書くのはどうなんだと思わなくもないですが、さすがに厳しくなってきたので楽史舎の既刊の価格を改定させていただくことにしました。
楽史舎は基本スタンスとして、欲しいという方がいらっしゃる限りはなるべく既刊を刷り続けることにしています。
とはいえ部数が少なくなってくると単価がぐっと上がってしまって出すだけ赤字というような状態になってしまいます。それを回避するために印刷部数を増やすと何年も在庫が積み上がり続けることに。
※そして意外と無視できないのが書店に在庫を送る運賃の高騰だったりします。
というわけで、少部数で印刷し続けられる体制を維持するために既刊の価格を100円ずつアップさせてください。
※『科挙対策律令』については200円アップで1000円となります。
多くの人に読んでいただきたいというのが大前提ではありますが、サークル活動を続けるための環境を作ることもサークルの務めじゃないかなと思ってます。ご了承いただければ幸いです。
なお、この改定は10月1日より適用する予定です。
BOOTH・東方書店さんいずれも今月中は現状の価格で扱っておりますので、いつか買おうと思ってたとか冬コミでまとめて買うつもりという方がいらっしゃいましたらお早めにお求めください。
(さんがつ)
冬に向けて
- 2018/08/27(月) 21:36:26
すっかり季節ごとの更新が定例化しておりますが、ともあれ夏コミでは多数の方にお越しいただき、ありがとうございました。
中国史の枠で参加しながら日本史の本を出すという状況にもかかわらず、『天下殿と話すための 宣教師の学んだ日本語文法』もわりと良い評価をいただけて、まずは胸をなで下ろしております。
もともと安土桃山時代の口語文法本として『NIFONNO COTOBA』という本を出してまして、知れば楽しいけど分かりやすい本が無いというニッチな需要を突けた楽史舎らしい本だと自負しているのですが、今見直してみると内容や組版など、もっとやりようがあったなという反省もあり、改めて作り直してみました。
調べ直してみる中でいろいろ発見もあったり、良い本を見つけたりして作った本を見直してみるのも悪くないなと。
そして次は冬コミです。今度こそ『はじめての即位』の別冊を予定しています。
無事に即位が済めば皇帝になれますが、なったからには名君と呼ばれたいもの。その暁には行いたい封禅についてまとめています。
今回、コミケと合わせて国会図書館に行きまして、いろいろ地元では入手が難しい論文などコピーしまくってきました。まずはこれらを読み込むところからですが、ページ数はともかく冬までには仕上げます。
ちなみに即位儀礼についても面白い論文をいくつも見つけてしまいました。いつか時間を取れれば『はじめての即位』についても内容を見直せればなぁと思っています。
今年は三国志学会も行けそうに無いので、すべてを冬コミにかける感じになりそうです。
※これで落選したらどんな顔をすれば良いのか……
(さんがつ)
テーマ:
- 展示会、イベントの情報 -
ジャンル:
- 学問・文化・芸術
十干十二支をマスターするために
- 2018/04/27(金) 21:34:36
今年初めてのブログ更新です。明けましておめでとうございますとでも書くべきでしょうか?
さて、先日の三国志研究会・愛知で「いつか書きたい三国志」の佐藤ひろおさんが干支について解説をして下さいまして、それからつらつらと考えてみたんですが、干支ってちょっと覚えればそれほど難しくないし、役に立つよなと。
なによりテーマはもとより脱線から広がっていく話がめちゃくちゃ面白いのでおすすめですよ。たまに私もしゃべってます。
干支でよく知られているのは壬申の乱とか戊辰戦争とか、甲子園とかじゃないかと思います。ちなみに今年(2018年)は戊戌(つちのえいぬ)です。
まず支は十二支なので説明するまでも無いですよね。今年は戌年ですので年賀状で犬の絵を描いた人も多いはず。
干はあまりなじみが無いかもしれません。甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の十干です。昔は成績の評価を甲乙丙丁で表したそうですが、今では使われなくなりました。焼酎の甲種・乙種くらいでしょうか?そういえば艦これで改二乙とか丁とかあるのもこれです。
暦で使われる干支がどうなっているかというと、十干の甲乙丙丁…と十二支の子丑寅卯辰巳…をそれぞれ順番に組み合わせていきます。
つまり最初はそれぞれ1番目の甲と子で甲子、次はそれぞれの2番目の乙と丑で乙丑となり、それぞれの10番目の辛酉、次は干は1番目に戻り甲、支は11番目の戌となって甲戌となります。これをずーっと続けていくと60番目に10番目の癸と12番目の亥を組み合わせた癸亥となり、次は両方とも1番目に戻って甲子となります。60歳で還暦というのも60歳になると干支が一周して生まれた年と干支が同じになることから来ています。
今ではほとんど意識されませんが、年だけでなく日付にも干支は割り当てられています。『三国志』とか古い歴史書に「4月丙午」とか書いてあるのがこれです。ちなみに2018年4月27日だと己丑です。とはいえ今だと土用の丑の日くらいしか使わないかもしれません。

と、ここまではWikipediaでも書いてあるような話ですが、歴史マニアとしてちょっと違う自分を演出するために干支の順番を覚えたいという方もいらっしゃるでしょう。
干支の法則
①十干と十二支はどちらも偶数なので、奇数の干と偶数の支が組み合わさることはありません。
丙午を「ひのえうま」と呼ぶように十干はきのえ・きのと・ひのえ・ひのと…と呼んだりしますが、木・火・土・金(か)・水と兄(え)・弟(と)の組み合わせになっています。つまり、甲乙は木の兄と弟、丙丁は火の兄と弟というように2つずつのペアになっています。
十二支もこれと対応するように子丑、寅卯、辰巳、午未、申酉、戌亥のペアにすると、ペアの前が十干の兄、後ろが十干の弟と組み合わされるのが分かりやすいかと思います。
②10増えるごとに支は2つ戻ります。
1番目の甲子から10増えると再び干は甲に戻りますが、支は11番目の酉となります。では21番目はどうかといえば干はまた甲で支は9番目の未となります。
つまり、最初の①甲子②乙丑③丙寅④丁卯⑤戊辰⑥己巳⑦庚午⑧辛未⑨壬申⑩癸酉だけ覚えてしまえば10,20,30といった上の桁にあわせて支をずらせば良いことになります。
※これを覚えるのが大変なんですが。
丙午から28年後の干支は何かと考える場合も、43+28=71なので干は甲と分かります。支は28を12で割った余りが4なので、午から4つ後の戌となり、甲戌であることが分かります。

年号と干支の計算
このルールを覚えておくと日本史や東洋史の年号は少し楽になります。
というのも、十干は10年で一周します。つまり、2018年が戊であれば2028年も戊ですし、遙か昔の208年だって戊なのです。
年に限って言えば甲=4、乙=5、丙=6…壬=2、癸=3という関係は変わりませんので、甲=4さえ覚えておけば年の下一桁を見るだけで十干を当てはめることができます。
甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 戊 | 己 | 庚 | 辛 | 壬 | 癸 |
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 |
そして干支を組み合わせて考える場合の基準は1番目の甲子ですが、最も覚えやすい甲子の年は西暦4年です。干支を知りたい年から4を引いたものを12で割った余りが1であれば丑年、4であれば辰年ということが分かります。2018年であれば、2018-4を12で割ると余りが10なので、戌年に当たることがわかります。
戊辰戦争の年号を正しく知りたければ、12の倍数+4+(辰年の)4の下一桁が戊の年の数である8になれば正解です。すると、12*155+4+4=1868というのが求まるはずです。
同様に壬申の乱であれば申年は8なので、12の倍数+4+8の下一桁が壬の2になれば正解です。したがって、12*55+4+8=672というのが求まります。
また、60年ごとに干支が同じになるので、西暦4年の660年後である664年も干支は甲子です。壬申は甲子から8つ後なので、664+8=672という求め方もできます。
いかがだったでしょうか?
ぱっと見はとても難解に見える干支を少し分かったような気分になっていただければ書いた甲斐があるのですが、とはいえドヤ顔で干支を語ると「キモい奴」という称号を与えられる可能性がぐっと高まりますので、使いどころは慎重に。
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ツイッターで書き流すってもったいなくないですか
- 2017/09/20(水) 23:16:17
若干煽り気味のタイトルなので先に結論を書いとくと、まとまった伝えたいことがある人は同人誌にまとめようよ。必要ならお手伝いするよ。ということが言いたい。
では本編。
この夏は自分史上最高にいろいろ新しいことに挑戦しまして、その中で同人誌を作った方、作ろうとしてる方と話をする機会をいただけました。よくよく考えてみればこれまでそういう機会は皆無に近かった。
話をするとしゃべりながら自分は同人誌についてこんなことを考えてたのかと気づくことが多々あります。ツイッターは考えてから書くので、思考の整理にはなるんですがそれ以上にはなりにくい。話すというのは思考のコアみたいなもっと深いところから言葉を引っ張り出す作業なのかもしれません。
そんな話はともかく、ここ最近の状況として面白いことを知ってる人がツイッターでつぶやいておしまいってもったいないなと思ってます。
もちろんTogetterみたいなのでまとめられてることもありますが、140字×数ツイートで伝わる内容ってどうしても薄くなるし、そもそもツイートって情報が薄くなりがち。
特にホームページやブログが流行らなくなってきたここ最近は思考結果が雲散霧消してしまってることが増えてるんじゃないでしょうか?
ホームページの更新が面倒でブログにしたのに、ブログの更新が面倒くさくなってくる不思議。
その一方で、肌感覚でしかありませんが歴史考証的な歴史の舞台を知るための知識のニーズって以前よりかなり高まっている気がします。このギャップってとてももったいないと思うんです。
手前味噌ですが、楽史舎は長くやってきただけあってそれなりの本が作れるようになったと思います。ありがたいことに、楽史舎みたいな本を作りたいと言っていただけることも増えてきた。
だったら本を作るネタを持ってる人の背中を少し押してみたいと思います。
同人誌を作るには調べる・まとめる・文章を書く・体裁を整える・印刷する・サークル参加する・書店に持ち込むなどなど、いろいろな作業が必要です。それぞれ1から考えるのは大変だし億劫です。
持っておられるネタについて、どうまとめるか、章立てするかなど、自分ならこうするというようなアイデアを伝えることもできますし、サークル参加が面倒であれば楽史舎で扱うこともできます。
とにかく、持ってるものをまとめて吐き出してみませんかという提案です。
こんなことに興味を持ってるのは自分しかいないだろうというようなネタでも、コミケだとなぜか面白がってくださる方が来ます。日食本が評価されるとかコミケしか無いよ。
それに本にまとめることで自身の知識が整理された新たな発見を得ることもあります。いいことずくめでやらないのはもったいない!
急に前のめりなことを書き連ねてどうしたんだと思われそうですが、早く動いてみないとツイッターが廃れてからじゃ遅いよなぁと漠然とした不安感から書いてみました。
そしてもう一つの動機。とにかく面白い本が読みたい。そしてあわよくば歴史ジャンルが盛り上がってほしい。
こんなことを書いてもなかなか難しいとは思いますが、興味を持っていただければありがたいです。
メールでもツイッターでも構いませんので、ご連絡いただければ。
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ばたばたと
- 2017/09/13(水) 23:36:45
というわけで、盆と正月にしか更新されない感のあるブログですが。
今年もいつも通りにコミケに参加して夏を終える気でいたんですが、ひょんなきっかけでいくつかイベントに参加させていただきました。
初めての経験を箇条書きするとこんな感じ。
・大崎駅の改札前で同人誌イベント参加
・『科挙対策律令』のツイートが6000リツイートを超える
・コミケでほとんどの本が売り切れ
・三国志研究会・愛知で「三国志と日食」について話す
・人形劇三国志を操演者の方と鑑賞
・同人誌を作ってる方とごはん
・三国志学会の東方書店の出店に楽史舎の本が置かれる
・本を買っていただいた青木朋先生の『はじめての即位』にサインを書く
これがわずか1ヶ月で起きるという目まぐるしさ。おなかいっぱいです。
とはいえ浸ってばかりもいられません。そろそろ冬に向けて原稿作業に集中します。
実相院門跡の渾天壱統星象全図について
- 2017/02/25(土) 19:02:50
案の定、すっかりご無沙汰のブログですがご機嫌いかがお過ごしでしょうか? こちらは世を忍ぶ仮の本業がけっこうキツくなってまして、色んなものが滞っております。非常につらい。
で、ストレスが溜まりに溜まったところで勢い良く京都に飛んできました。
お目当ては岩倉にある実相院門跡の特別展示・渾天壱統星象全図展です。何よりまず案内チラシがたまらなく良いものでして、これは拝見せねばなりますまい。
朝一番でお客さんが誰もおらず、貸切状態のかぶりつき。チラシの通り色遣いが素晴らしく、真ん中に星図、四方を天文に関する記述で囲むという構図は非常に美しいです。複製でもいいので持って帰れるものなら持って帰りたい。というか何でポストカードの一つも無いんですか実相院さん。
屏風の前に座布団が敷かれていますので、その空間を独り占めしながら『軍師必携 天文』の星図と見比べてみたんですが、何か違和感があります。
チラシを見た時点ではこの星図は宋代の淳祐天文図を写したものだろうと推測していました。しかしどうやらいろいろ違うようです。
今回はいくつか箇条書きにしながら思うところを書いてみます。
①軒轅の分割
軒轅というのは古くからよく知られている星座で、どの星図を見ても形が変わることはありません。皇后を象徴する星であり、『晋書』天文志では南の方の星について左の星は少民であり、右の星は大民であるとあります。これは皇后・皇太后の親族です。
ところがこの星図では上の方の星と皇后を象徴するレグルス以下の星で分割されてしまっています。また、左の星は「土民」と書かれています。あえて軒轅の文字を星座の上の方に書き、レグルス以下の星に上民・大民・土民・御女と書いていることから、これらを別の星座と認識していた可能性は高いように思います。
②2星ある招揺
招揺という星も軒轅と同様に古くからよく知られている星座です。うしかい座の3等星で、かなり目立つ星なのですが、星図では2つの星が招揺とされています。
そばにあるの玄戈は2星とする本があったりしますが、招揺が2星あるというのは見たことがありません。
③王良の位置
王良というのはちょうど今のカシオペア座に当たります。非常に明るい星ですし、北極星を探す目印でもありますので実際に空を眺めて見た方も多いのではないでしょうか?
これも上2つの星座と同様、古くからよく知られている星座です。この星図でも放射線状に星をつなぐ特徴的な星座の形が描かれています。
しかし不思議なことに王良の文字は星座の近くには無く、隣の騰蛇のそばに書かれています。間違えることは考えにくい星座を間違えているという点で非常に強い違和感を感じる項目です。
④翼宿の分割
翼宿というのは中国の星座で最も重要な28宿を構成する星宿のひとつです。それでいて非常に暗い星が含まれているとしか思えない、形がよく分からない星でもあります。
星図では翼宿で最も明るい星々をつないだ中央の7星だけを翼宿としています。そしてその北側には「大角」と書かれた5星の星座が描かれていおり、南側には「司方五」と書かれた星座が描かれています。他の星図にはこれらのような星座は無く、おそらく翼宿の上部・下部にあたる星ではないでしょうか?
ここからは勝手な推測になってしまいますが、星図によっては一部の星が見えない星座に「○星不見」のようなことが書かれていることがあります。「司方五」に相当する星はいずれも暗い星ですのでそのそばに「司方五」を含んだ文字が書かれており、それを星座と勘違いした可能性もあるのではないでしょうか?
⑤その他
十二国の描かれ方が独特だったり、その真ん中に「正旗」という星座があったり、氐宿の描かれ方も妙だったりといろいろ指摘すればきりが無いのですが、ここでは割愛します。
で、どういうこと?
否定的なことを書くのは心苦しいのですが、勝手な想像が許されるならこの星図は天文についてあまりよく知らない人物が星図のデザイン性に着目して取り込んだものではないでしょうか? 現代でもデザイナーが対象についてよく理解しないままに格好いいからという理由で作品に取り込んで妙なことになっている、という例は多々ありますし、似たようなものなのかもしれません。
大阪市立科学館で出されている研究報告に「この星図は中国・清朝の道光年間に刷られたものであるが、中国にはほとんど残存しないのに対し、日本で何枚か見つかっている」とあります。さらに踏み込んで穿った見方をするなら中国からの伝来品ということ自体が事実では無いということもあるように思います。
推測の正否はともかく、この星図が中国で学術的に描かれた星図と相違があるというのは言い切ってしまっても良いのではないでしょうか?
以上、つらつらと書いてみましたが、しかし美術品としては非常にすばらしいものです。
ガラス越しではなく、至近距離から直に見られるチャンスは3月20日までですので、機会があれば是非ともお出かけください。
(さんがつ)
『晋書』に近づける
- 2017/01/09(月) 20:57:38
明けましておめでとうございます。と書くほど季節感が大事なブログでもないですが、まずはご挨拶。本年もよろしくお願いします。
さて、昨年は夏冬とコミケに出ることができまして、ご参加いただいた方々には御礼申し上げます。
また久しぶりに前年冬から夏冬と3期連続で本を出すことができ、なかなかに充実した年となりました。
そうは言っても冬の『軍師必携 天文』は過去の『星空の名前』と『宙の世界』の再編集ですが、やるからにはいろいろ新しいことをしないと、というわけで『晋書』天文志の注釈の見直しと星図の星の配置の見直しに着手してみました。
まず天文志について。
三国志の頃の天文について知りたいと思ったときにまず見るのは『後漢書』と『三国志』でしょう。
しかし、ワクワクしながら『後漢書』天文志を見ると天変地異の記事があるばかりで体系的なことは何も書かれていません。さらに『三国志』には天文志がまったくありません。陳寿が最初から書く気が無かったのか、後で書くつもりだったのか、どっちなんでしょう? どうやら『東観漢記』に天文志があるらしいと調べてみると散逸とか……
というわけで次の『晋書』を見てみると宇宙観から星座から、知りたかったあらゆることが書かれているわけです。救いの神はここにいた!しかも『世界の名著』に訳文もあるし!
うん良かったねーと言えればいいんですけど訳文がちょいと難しくありませんかね藪内先生……というのと、そもそも『晋書』天文志には致命的な欠点がありまして、一部分だけぽろっと文章が抜け落ちてます。しかもたぶん最初から。
当時間違いなく存在していたはずの星座がなぜか抜け落ちており、しかも天文志の別の箇所にはしっかり星座名が出てくるという有様で、『晋書』を何かで補ってやらないと当時の星座を把握することはできません。
そこでいろいろ調べてみて行き着いたのが『隋書』です。
興味のある方は見比べてみていただけると良いのですが、驚くほどコピペです。それもそのはず、この2つの天文志はほぼ同時期に同一人物によって書かれたものでした。というわけで、『隋書』の記述を大幅に取り込んで作り直したものを今回の『天文』に収録してみました。
次に星図について。
『宙の世界』を作った2008年当時と比較すると、ネット上の中国星図は格段に増えたようです。ただ、おそらくどれも元ネタは同じなんでしょう、『宙の世界』もそうなんですが元になっているのは清代に書かれた『欽定儀象考成』です。
私自身も『宙の世界』を制作していた際は特に違和感を覚えることもありませんでした。しかし改めて天文志と突き合わせてみるといろいろ違うんですね。
そこで改めて調べてみると天文志に書かれている位置と合わない星座があれもこれもと出てきます。ついでに古いといっても宋代ですが……星図なども参照して再配置してみました。
おそらく誰も見たことがない星図になっておりますので、お楽しみいただければ幸いです。
次に何をするかはまだ決まっていないんですが、いろいろ本を読みながら早々に決められればと思います。
またいろいろツイッター @sangatsu_rakshiでつぶやいておりますのでよろしければこちらもご覧ください。
(さんがつ)
夏コミ御礼
- 2016/08/14(日) 20:54:16
いつも書いている気がしますが、もう夏コミが終わってしまいました。
ありがたいことに多くの方にサークルスペースにお越しいただき、新刊の『よくわかる九章算術』もなかなか良い評価をいただけたようです。
相変わらず何の役にも立たない本ですが、お楽しみいただければ幸いです。
夏が終わればあっという間に冬です。
今のところ新刊のアイデアがまったく無い状況ですので、絶版になってしまった中国の天文関係の本を再編集してみようかと考えています。
余裕があれば『NIFONNO COTOBA』の電子書籍化にも挑戦してみたいですが、こちらはできればラッキーくらいでしょうか。
いずれにせよ、冬の原稿を進めつつ来年の夏に向けての準備が始まります。