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『晋書』に近づける

  • 2017/01/09(月) 20:57:38

明けましておめでとうございます。と書くほど季節感が大事なブログでもないですが、まずはご挨拶。本年もよろしくお願いします。

さて、昨年は夏冬とコミケに出ることができまして、ご参加いただいた方々には御礼申し上げます。
また久しぶりに前年冬から夏冬と3期連続で本を出すことができ、なかなかに充実した年となりました。
そうは言っても冬の『軍師必携 天文』は過去の『星空の名前』と『宙の世界』の再編集ですが、やるからにはいろいろ新しいことをしないと、というわけで『晋書』天文志の注釈の見直しと星図の星の配置の見直しに着手してみました。

まず天文志について。
三国志の頃の天文について知りたいと思ったときにまず見るのは『後漢書』と『三国志』でしょう。
しかし、ワクワクしながら『後漢書』天文志を見ると天変地異の記事があるばかりで体系的なことは何も書かれていません。さらに『三国志』には天文志がまったくありません。陳寿が最初から書く気が無かったのか、後で書くつもりだったのか、どっちなんでしょう? どうやら『東観漢記』に天文志があるらしいと調べてみると散逸とか……
というわけで次の『晋書』を見てみると宇宙観から星座から、知りたかったあらゆることが書かれているわけです。救いの神はここにいた!しかも『世界の名著』に訳文もあるし!
うん良かったねーと言えればいいんですけど訳文がちょいと難しくありませんかね藪内先生……というのと、そもそも『晋書』天文志には致命的な欠点がありまして、一部分だけぽろっと文章が抜け落ちてます。しかもたぶん最初から。
当時間違いなく存在していたはずの星座がなぜか抜け落ちており、しかも天文志の別の箇所にはしっかり星座名が出てくるという有様で、『晋書』を何かで補ってやらないと当時の星座を把握することはできません。
そこでいろいろ調べてみて行き着いたのが『隋書』です。
興味のある方は見比べてみていただけると良いのですが、驚くほどコピペです。それもそのはず、この2つの天文志はほぼ同時期に同一人物によって書かれたものでした。というわけで、『隋書』の記述を大幅に取り込んで作り直したものを今回の『天文』に収録してみました。

次に星図について。
『宙の世界』を作った2008年当時と比較すると、ネット上の中国星図は格段に増えたようです。ただ、おそらくどれも元ネタは同じなんでしょう、『宙の世界』もそうなんですが元になっているのは清代に書かれた『欽定儀象考成』です。
私自身も『宙の世界』を制作していた際は特に違和感を覚えることもありませんでした。しかし改めて天文志と突き合わせてみるといろいろ違うんですね。
そこで改めて調べてみると天文志に書かれている位置と合わない星座があれもこれもと出てきます。ついでに古いといっても宋代ですが……星図なども参照して再配置してみました。
おそらく誰も見たことがない星図になっておりますので、お楽しみいただければ幸いです。

次に何をするかはまだ決まっていないんですが、いろいろ本を読みながら早々に決められればと思います。
またいろいろツイッター @sangatsu_rakshiでつぶやいておりますのでよろしければこちらもご覧ください。

(さんがつ)

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