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実相院門跡の渾天壱統星象全図について

  • 2017/02/25(土) 19:02:50

案の定、すっかりご無沙汰のブログですがご機嫌いかがお過ごしでしょうか? こちらは世を忍ぶ仮の本業がけっこうキツくなってまして、色んなものが滞っております。非常につらい。

で、ストレスが溜まりに溜まったところで勢い良く京都に飛んできました。
お目当ては岩倉にある実相院門跡の特別展示・渾天壱統星象全図展です。何よりまず案内チラシがたまらなく良いものでして、これは拝見せねばなりますまい。
朝一番でお客さんが誰もおらず、貸切状態のかぶりつき。チラシの通り色遣いが素晴らしく、真ん中に星図、四方を天文に関する記述で囲むという構図は非常に美しいです。複製でもいいので持って帰れるものなら持って帰りたい。というか何でポストカードの一つも無いんですか実相院さん。

屏風の前に座布団が敷かれていますので、その空間を独り占めしながら『軍師必携 天文』の星図と見比べてみたんですが、何か違和感があります。

チラシを見た時点ではこの星図は宋代の淳祐天文図を写したものだろうと推測していました。しかしどうやらいろいろ違うようです。
今回はいくつか箇条書きにしながら思うところを書いてみます。

①軒轅の分割
軒轅
軒轅というのは古くからよく知られている星座で、どの星図を見ても形が変わることはありません。皇后を象徴する星であり、『晋書』天文志では南の方の星について左の星は少民であり、右の星は大民であるとあります。これは皇后・皇太后の親族です。

ところがこの星図では上の方の星と皇后を象徴するレグルス以下の星で分割されてしまっています。また、左の星は「土民」と書かれています。あえて軒轅の文字を星座の上の方に書き、レグルス以下の星に上民・大民・土民・御女と書いていることから、これらを別の星座と認識していた可能性は高いように思います。



②2星ある招揺
招揺
招揺という星も軒轅と同様に古くからよく知られている星座です。うしかい座の3等星で、かなり目立つ星なのですが、星図では2つの星が招揺とされています。
そばにあるの玄戈は2星とする本があったりしますが、招揺が2星あるというのは見たことがありません。



③王良の位置
王良
王良というのはちょうど今のカシオペア座に当たります。非常に明るい星ですし、北極星を探す目印でもありますので実際に空を眺めて見た方も多いのではないでしょうか?
これも上2つの星座と同様、古くからよく知られている星座です。この星図でも放射線状に星をつなぐ特徴的な星座の形が描かれています。
しかし不思議なことに王良の文字は星座の近くには無く、隣の騰蛇のそばに書かれています。間違えることは考えにくい星座を間違えているという点で非常に強い違和感を感じる項目です。



④翼宿の分割
翼宿
翼宿というのは中国の星座で最も重要な28宿を構成する星宿のひとつです。それでいて非常に暗い星が含まれているとしか思えない、形がよく分からない星でもあります。
星図では翼宿で最も明るい星々をつないだ中央の7星だけを翼宿としています。そしてその北側には「大角」と書かれた5星の星座が描かれていおり、南側には「司方五」と書かれた星座が描かれています。他の星図にはこれらのような星座は無く、おそらく翼宿の上部・下部にあたる星ではないでしょうか?
ここからは勝手な推測になってしまいますが、星図によっては一部の星が見えない星座に「○星不見」のようなことが書かれていることがあります。「司方五」に相当する星はいずれも暗い星ですのでそのそばに「司方五」を含んだ文字が書かれており、それを星座と勘違いした可能性もあるのではないでしょうか?



⑤その他
十二国の描かれ方が独特だったり、その真ん中に「正旗」という星座があったり、氐宿の描かれ方も妙だったりといろいろ指摘すればきりが無いのですが、ここでは割愛します。

で、どういうこと?
否定的なことを書くのは心苦しいのですが、勝手な想像が許されるならこの星図は天文についてあまりよく知らない人物が星図のデザイン性に着目して取り込んだものではないでしょうか? 現代でもデザイナーが対象についてよく理解しないままに格好いいからという理由で作品に取り込んで妙なことになっている、という例は多々ありますし、似たようなものなのかもしれません。
大阪市立科学館で出されている研究報告に「この星図は中国・清朝の道光年間に刷られたものであるが、中国にはほとんど残存しないのに対し、日本で何枚か見つかっている」とあります。さらに踏み込んで穿った見方をするなら中国からの伝来品ということ自体が事実では無いということもあるように思います。
推測の正否はともかく、この星図が中国で学術的に描かれた星図と相違があるというのは言い切ってしまっても良いのではないでしょうか?

以上、つらつらと書いてみましたが、しかし美術品としては非常にすばらしいものです。
ガラス越しではなく、至近距離から直に見られるチャンスは3月20日までですので、機会があれば是非ともお出かけください。

(さんがつ)

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